6月、寮対抗体育祭 ページ5
6月の某日。体育祭が行われた。
「暑ーい」
強い日差しの中、わたしは応援席で生徒達を見守る。
わたしの格好は、いつもの格好よりは通気性がよくて汗の吸収が良いやつ。簡単にいえばスポーツウェアだ。
他の先生みたいにアームカバーやサングラスみたいなものを身に付けた方がいいかな、と思ったけれどなんとなく邪魔そうだなと思って今回はやめた。
代わりに強い日焼け止めを買ってきたからこまめに塗るつもりだ。
色々な競技があって、わたしが生徒だった時と同じ競技や少し違う競技など、色々だ。
とても懐かしい気持ちと新鮮な気持ちが入り混じった。
「……ん?」
ちら、と視界の端に黒いものが写った。気になって振り返ると
「うっわ、真っ黒だ」
いつも通り真っ黒衣装に黒い仮面のヘッケンローゼ先生が居た。長袖だし傘まで差してる……!
「そんなに真っ黒で、暑くないんですか?」
思わず聞きに行った。他の先生や生徒達が「わざわざ聞きに行くのか」と言いたげな顔をしていたけれど、わたしは気にしない。聞きたかったから聞きに行くだけだ。
「わざわざ聞きに来るんですね……こう見えて涼しいですよ。闇魔法で暑さを吸収してますので」
一瞬口元が嫌そうに引きつったように見えたけれど気のせいだと思おう。どうやらヘッケンローゼ先生は闇魔法をほんの少しだけ器用に使って、暑さや熱、光などを和らげているらしい。
「はえー、すっごい便利ですね、闇魔法……」
わたしはそんなことしか言えなかった。というか、それが本当なら結構器用なことしてるよねヘッケンローゼ先生。
全く汗をかくような様子が見えないので、暑さを吸収しているのは事実なんだろう。心なしか、ヘッケンローゼ先生の周囲がなんとなく涼しい。
「……いつまで側に居るつもりですか。用事は済んだのでしょう?」
いつも通りに冷ややかな言葉だ。だけれど、この人は冷ややかな言葉遣いがデフォルトだと知っている。なので彼が怒っている訳ではないのだと分かる。ただ人を遠ざけたいだけなんだ。
「でも、ヘッケンローゼ先生の周囲がなんとなく涼しくて」
「人で勝手に涼まないでください。貴女の寮や持ち場は向こうでしょう」
しっし、と追い払われた。露骨。でも、わたしが近付くのは嫌がっていなかったっぽいんだよね……。
そう思いながらわたしは持ち場に戻る。そのあとミオソティス先生から「さっきヘッケンローゼ先生と何話してたのー?」とかなり興味津々に質問攻めにあった。なんで?
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時