1月、年明け運動期間 ページ12
年の明けた1月。
年明け運動期間があり、運動をしている生徒達を廊下から眺める。
「楽しそう」
まあ、運動が苦手な生徒からすると嫌な習慣なんだろうな、とちょっと思う。わたしは運動は好きな方だったから何の問題もなかったんだけどね。
「あ、ヘッケンローゼ先生」
「何か用事ですか」
そして。探していた人を見つけ、駆け寄る。
「わたしのこと、避けてます?」
それから、わたしはずっと言いたかった言葉をかけた。
「……は? 何を仰るのですか。何もしていませんよ」
そう返されるのは予想済みだ。
「冬休みとか一回も会わなかったじゃないですか」
「それが何だというのです。身内ではあるまいし」
確かにそうだ。友人でもないし、一緒に何度か出かけた夏休みの方がおかしかったんだろう。
「どこ行ってたんですか」
「別の大陸に魔物を狩りに」「わたしも行きたかった!」
食い気味に言ってしまった。良いな! 他の大陸に行ってたなんて!
「1人で行けば良いでしょうが」
「一緒の方が楽しかったですよ!」
「声が、大きいです」
「……最近も、会わないし」
言われて、慌てて声を落とした。
本当に、冬休みが明けてから一回も会わなかったのだ。同じ学園の教員だって言うのに、明らかにおかしいでしょう?
「……気のせいでは」
「気のせいじゃないです」
多分、未来視か占星術で先読みしてるでしょ、と指摘したら『それがどうした』と言わんばかりに彼は腕組みをした。誤魔化すのをとうとう止めたな。
「では。仮にそうだったとして。貴女に何か問題でも?」
「え、問題?」
言い返されて、はた、と気付く。確かに、なんでこんなに気にしているのだろうと。
「同じ学年を受け持っている訳でもなく共同で授業をしている訳でもない。関係性の薄い私と交流が無くなったとて、何も問題は無いのでは」
「……うー」
彼に指摘され、それもそうだと思い直した。
わたしとヘッケンローゼ先生は、他人なんだ。友人でもないし。
「面白半分で私に関わるのは止めて下さい。私も暇では無いのです」
彼は冷ややかにわたしに言葉を浴びせた。
「面白半分……なんかじゃない、です」
拒絶の色をしていたその言葉に怯んで、声が震えてしまった。面白半分じゃないなら、なんで声をかけたんだろうと自分で思いながら。
「ともかく。用事が無いのなら話しかけないで頂けます?」
「……むー」
反論の余地が無かった。だからわたしは押し黙る。だけれど、なんだかモヤモヤした。
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時